無添加ソフトクリームに込められた想い(別所 武さん サントアン SV)


「初めて心からつくりたいって思ったのが、このソフトクリームだったんです」。

 サントアンの“無添加ソフトクリーム”を開発した別所武さんの言葉です。今はサントアンで販売を担当しているが、以前はパティシエとして働いていた別所さん。彼が心からつくりたかったソフトクリームとはどんなものなのだろう。

 一般的なソフトクリームは、メーカーから販売される“ソフトクリームミックス”に牛乳を足して専用の機械で冷やしながらつくられることがほとんどだという。しかしそのソフトクリームミックスには、乳化剤や安定剤などの食品添加物が入っている。どんな牛乳や素材が混ぜられても分離せずに、なめらかさやとろみを出す必要があるからだ。以前はサントアンでも一般的なソフトクリームミックスを使用している時期があった。しかし“サントアンとして本当に出したいソフトクリームとはどんなものか”を考えたとき、「そういった食品添加物を使っていないものをつくり出したい」、そんな想いでできたのが現在の“無添加ソフトクリーム”だ。

 「無添加の自分たちオリジナルのソフトクリームができたら面白いじゃんって言って始まったんですけど、やり始めたらものすごく難しくて。どうすれば水分と脂肪分が分離しないかを調べていたら、デンプンでできるっていうのを見つけて米粉を入れて熱して試してみたりとか、本当にいろいろと試行錯誤したんです。その頃はすごく必死だったので、寝ているときも開発中の夢を見て、『できた!』と思って起きたらできてない!みたいなことが何度もありました(笑)」。

 いろんな紆余曲折を経てできたのが現在の“無添加ソフトクリーム”。原材料は、丹波乳業のノンホモゲナイズの牛乳と種子島産の粗糖、もち米水飴、さやのまま使用するバニラビーンズ、そして水分と脂肪分の分離を防ぐ役割として最適だったのは魚由来のゼラチンだ。サントアンのソフトクリームは、このように“説明されて簡単にイメージできるもの”でできている。

 「初めて自分が心からつくりたいって思ってやる気になったのがこのソフトクリームだったんです。パティシエって自分が『好き』とか『かわいい』って思うものを生菓子で表現する人も多いんですけど、僕はそれが苦手だったのかな。自分を表現したい訳ではなかった。ただ“本当のソフトクリーム”って思えるもの、自分がそう思えるものを、つくりたかったんです」。
 そんな別所さんの想いがこもっているのがこの“無添加ソフトクリーム”。出来上がって最初に食べて欲しいと思ったのは自分の子どもだった。そのくらい安全性に自信があるソフトクリームが出来上がったのだ。

 別所さんは現在はパティシエではなく販売の仕事をしている。お客さんと接する機会の少なかったパティシエの頃とは違い、お店に足を運んでくれる方と実際に話し、流れを感じながら働くのが楽しいという。お客さんたちの声を直に聞いて製造スタッフと連携をとりながら新商品をつくる。中と外の仕事をどちらも経験している別所さんにしかできない仕事だ。

「サントアンのソフトクリームは、普通のものと違ってソフトクリームの味が強いので合わせるソースを調節しないといけないんです。最近は和風のものと相性がいいというのがわかったんで、さらに新しい発想を持ってつくっていきたいです」。

月ごとにソースなどの合わせる素材が替わるサントアンの“無添加ソフトクリーム”。少しずつ暖かくなってきたこの季節に、ぜひ大切な人と一緒に食べてみてください。


取材と文章:増永愛子