サントアンレポート 2025.09


おいしいお菓子は包丁から  文章:山下滉生

 包丁を研いだことはありますか?作業が面倒?手が汚れる?非効率的?確かにそうかもしれません。この面倒で大変な包丁研ぎの時間が私は大好きです。シャッ、シャッ…。無音の空間に流れるこの音が包丁を整え、自分をも整えてくれる。無心になり、まるで瞑想しているかのようです。


 私には包丁研ぎの「師匠」がいます。調理を学べる高校に通っていたころ、料理のイロハを教わった藤原竹志先生です。練習がしたいと遅くまで残っても、文句一つ言わず一緒に残ってくださる、熱く、愛のある先生です。

 今回藤原先生を講師に招き、サントアンスタッフと包丁研ぎについて詳しく学びました。

 

 まずはじめに理論から。包丁の構造や砥石の手入れ、研ぎ方など一から詳しく。なぜ切れる包丁が良いのか、研ぎ方による食材の切れ方の違いなど、私たちの疑問を分かりやすく解決してくださいました。


【包丁が切れることのメリット】

・食材の細胞を壊さず切れるため水分やうまみが逃げにくく、劣化が遅い。

・無理に力を入れて切ることがなくなるのでケガの防止になる。

・ストレスなく切れるので料理が楽しくなる。


 ついに実践!砥石を浸しておき、包丁の角度を一定に保ったまま研いでいく。リズムよく、力を抜いて。シンプルながらも難しい作業。どういう包丁にしたいかをイメージしながら、スタッフみんな綺麗に研ぐことができました。藤原先生からのアドバイスでスタッフそれぞれ気づきがあり、実りある講習会となりました。


 包丁が食材に与える影響はとてつもなく大きいです。生産者さんから分けてもらうおいしくて安全な食材を活かせるかどうかは私たち次第。仕事の命とも言える包丁や道具を大切に扱うことこそが、おいしいお菓子を生み出すと信じています。その瞬間の全力をお菓子に注げるように。すべては自分の足元から。