シュークリーム〜僕のパティシエの原点〜 文章:河野景介
僕がサントアンの数あるケーキの中からぜひおすすめしたいケーキがある。
それは「シュークリーム」。
なぜなら、シュークリームにカスタードクリームと僕の思い入れが詰まっているから。
「カスタードクリーム」またの名を「クレーム・パティシエール」。
これはフランス語で、直訳するとパティシエの作るクリーム。カスタードクリームがなぜ、パティシエの作るクリームと呼ばれているのか。
僕がカスタードクリーム(以下カスタードと略)作りを任せてもらえたのは入社して3ヶ月が経った頃。初めて任せてもらえた仕事、気合いを入れてカスタードを炊いた。先輩に横で教えてもらいながら、いざ挑戦!
牛乳とバニラに火を入れ、卵、砂糖、小麦粉を混ぜたものに沸かした牛乳を合わせて強火でしっかり混ぜながら炊いていくと色鮮やかな黄色いクリームに。
「おぉ、綺麗!」と心の中で感動。
そこから15分ほど炊いていくのだが、途中で味噌か何か入れたっけな?と思ってしまうほど、だんだん茶色に。そう、焦がしてしまったのだ…
先輩からは、「まぁ、初日だからね…」と焦げくらい苦い笑いをされてとても悔しかった。
ゴミ箱に処分する時の悔しさと材料に対する申し訳なさは今でも覚えてるし、忘れてはいけないと思っている。
その日から数日続けて炊いたが、どうしても焦がしてしまう。僕が焦がし、先輩が作り直す日々が続いた。悔しいという感情が消え、ケーキ作りをやりたくないという感情が芽生え始めた。
それを見兼ねた先輩から、カスタードはパティシエとしての基本が詰まったクリームである事を教わる。そうか、パティシエになるには、これを作れないとなれないのか。
逆にこれが出来ればパティシエになれる!とちょっと変な解釈をした若かった僕だったが、気合を入れ直して毎日作り続けた。
基本を見直し、使用する台は綺麗に、材料も無駄に使わず、仕事は迅速かつ丁寧に。毎日少しずつの工夫と研究。炊けたクリームは毎日味見。すると同じ材料なのに違う味に。もっと美味しく作りたい!それが楽しくなってきた頃、ようやく美味しいと思えるカスタードになった。コツコツが成功のコツであった。
僕はそれから3年間炊き続け、今は後輩達へ引き継がれ、毎日カスタードを炊いてパティシエの基本を磨いている。
美味しいカスタードはツヤがあり、プルっとした見た目。歯切れがよくスゥーと口の中で馴染んでいくけど、卵、牛乳の風味がしっかり残りスッキリとした味わいがある。
美味しく作る技術だけではなく、材料も肝心。サントアンでは、丹波の風味豊かな低温殺菌牛乳、遺伝子組み換えではない餌を使用した安心かつ濃厚なカンナンファームさんの卵、豊富なミネラルを含む洗双糖など厳選された安心安全な材料を使っている。
サントアンのパティシエ達が作るカスタードをこれでもか!というほど詰めたシュークリーム。
さぁ、ボナぺティ(召し上がれ)!
※キャプション
入社して3ヶ月目から炊き始めたカスタード作り、気付けば3年間も任され作り続けた。
カスタードと愛情がたっぷり詰まったシュークリームはお客様含めスタッフからも絶大な人気
河野景介(Keisuke Kawano)
サントアン/パティシエ 1993年生まれ。2014年入社。焼菓子担当。家族の都合で6年間離れるも、2023年再入社。社内で一番の明るいムードメーカー。状況把握に長け、細やかな気配りに、誰もが心を開く。