コラム 2023.12


つづる 伝える


 サントアンで買い物をしてくださったお客様にお配りしている広報誌「THE LETTER」

内容やページ数を充実させ、リニューアルしてから1年が過ぎようとしています。


 「レタァー!!」広報誌のタイトルを何にしようか話し合っていた会議でのことです。

その場にいた広報チーム勢が同時に声を出し、こぼれる笑顔で互いに視線を交わしました。ぴったりと合う言葉が見つかったことが嬉しくて、つい声が出てしまったのです。おたより?新聞?通信?これは、サントアンで働く私たちからお客様へつづったお手紙だよね。そんな思いを込めてタイトルを「THE LETTER」に決めました。


 インターネット・SNSが普及し、情報発信力が欠かせない時代になりました。同時に情報に溢れた社会の中で、情報の質が問われる時代にもなってきました。これまでのサントアンの発信力や情報の質では、伝えたいことと実際に伝わっていることに隔たりがあるように感じ始めていた頃、地域編集室 / 蓑⽥理⾹さんに出会い、サントアンへお招きして社内で「伝える勉強会」を開催しました 何を伝えるのか?を整理、構成し、情報を伝える編集の仕組みを学び、「“そもそも” なぜそれを伝えるのか?」に立ち戻り、サントアンらしい発信力を身につけていくきっかけになった勉強会です。その時に出し合ったアイデアが元となり、現在の広報誌が形作られています。

 お客様に知ってもらいたいあれこれを自分たちの言葉で伝えられるように、販売や製造業務のかたわら、社内有志で広報チームを組み、インタビューをし、記事を書いています。不器用ながらも心を込めて書き上げて、一部の写真、デザイン構成や文章はプロに協力いただきながら発行しています。


 私も広報チームの一員となって、お客様とスタッフへつづるお手紙として、このコラムをいろんなテーマで書かせてもらっています。イベントを通して感じた私たちの使命・お庭について・社内まかない制度への思いなどなど。月ごとにサントアンの取り組みとその姿勢をいろんな切り口からお伝えしてきました。どんな思いでお菓子を作り、お店を営んでいるか、お客様とスタッフとどんな関係を結んでいきたいか。この1年間はひたすらに、ありのままを偽りなく書いてきました。


 正直に書きすぎてお客様が離れてしまうのではないか。と書いては消してを繰り返し、それでもやっぱり本心を覆ったままのうわべだけの文章では、心から信頼し合える関係は築けないだろう。と、意を決して書いてきました。


 2023年5月号にて、サントアンが取り扱う自然食料品にまつわるコラムの中で「お菓子は大切な役割と文化を担っている素晴らしいものだが、特別な時に食べる嗜好品で日々の常食には適さない」と思い切って書いたことがあります。自分を含むお菓子を愛する人を否定していると伝わるのではないかと印刷に出した後も、お客様にお配りしている期間も、ずっと気が気ではありませんでした。


 それをご覧になったお客様から1通のメールをいただきました。お叱りのメールかもしれないと恐る恐る読んでみると「深い感銘を覚えたのでメールを差し上げたくなりました。より良いお菓子とは?の章で、“しかし、云々から常食には適しません。”の文章は、洋菓子店であるサントアンとしては勇気の要る内容で、サントアンのお菓子に対する基本姿勢と良いお菓子を作っているという自信も感じられ、その勇気に心から拍手したいです」とありました。旧店舗から続くサントアンとの思い出や接遇にたいするお褒めの言葉、さらにはありがとうございました。とつづられていたのです。


 思いがけずお返事をいただいたこと、温かな応援と共感の言葉に涙がこみあげました。目には見えてはいないけれど、そこに確かな信頼関係が生まれていることを感じました。コラムと真正面から向き合って、ありのままの気持ちを隠さなくて良かった。店舗、商品や接遇に込めた思いや願いが通じ合う、素晴らしい体験をしました。


 はたして、サントアンの取り組みは、人を幸せにしているだろうか。ときどき、自分の行いを疑いたくなる時があります。けれど、この1通のメールに全てが救われるような思いになりました。1人しか通れなくていい、少しずつでいい、私たちの信じる道を進めるように「伝える」を諦めないでいようと思います。