私とタルト・オ・フリュイ ヴェテー弥生
サントアンのケーキで、初めて誕生日ケーキとして食べたのが、タルト・オ・フリュイだった。職業柄それまで数え切れない程のケーキを作り、そして食べてきたけれど、声を大にしていいたい。めっちゃ美味しいよって。 なんでって?一言で説明するのは難しいが、ケーキのバランスが絶妙なのだ。
トップに綺麗に並べられた 季節のフルーツ、そしてケーキを包み込む一枚一枚丁寧に焼かれたクレープ、 生クリーム、スポンジ、 そしてババロア。 生クリームが控えめなこのケーキ 、最大の魅力はババロアが入ってる所。舌ざわりがとても滑らかで、口の中ですっと溶ける、かつ上品な甘さ、素材のこくが感じられる。
魅力はそれだけに留まらない。どんな果物とも相性がよい。サントアンのショーケースを覗いてみると、タルト・オ・フリュイが必ず季節のフルーツを乗せて並んでいる。クリスマスから春先にかけては苺。苺が終われば 夏はマンゴーやブルーベリー、そして秋は黄緑色のシャインマスカット、鮮やかなオレンジ色の柿にバトンタッチ。
毎年必ず食べているはずなのに、苺の季節が来るのをまだかまだかと楽しみに待っている自分がいる。だって私のイチオシはタルト・オ・フレーズだから。甘酸っぱい苺と、上品な甘さのゼリーとの相性が絶妙。
タルト・オ・フリュイと名付けられているから、クッキー生地を使ったタルトかと思いきや、サントアンではドイツ語の語源から「切り分けてたべるお菓子」「まあるいお菓子」をさしている。とはいえ今は令和、場所は兵庫県三田市。そんな歴史に馴染みがなくても全然大丈夫。
それよりも、切り分けて食べる誕生日のケーキの代表格として、今も名前を呼ばれ、引き継がれ、残っている事の方がすごいと思う。
1年に一度必ずやってくる誕生日。
電気が消され、ゆらゆらと揺れる ローソクの炎を前にお誕生日の歌を唄い、ふうと吹き消す。
そして、まあるいケーキを、どこから切ろうか?
「こっちの方が大きい!」
「フルーツがこっちの方が大きい!」
「チョコレートプレートは誕生日の人!」
そんな会話のやりとりの中心には、 タルト・オ・フリュイ。
そこには幸せに満ちた時間が流れている。
幸せな時間を運んでくれる魔法があるとしたら、このタルト・オ・フリュイにはその力が秘められていると私は思う。なんでって?私はその魔法にかかった一人だから。

