つくるひと 2023.04


「人を思い、動いてしまうひと」


笠 井 順 子 さ ん


取材・文章|西 尚美


 「お客様が “ありがとう” って、そう言ってもらうのが一番ね、嬉しいので」


 お話を伺う中で、笠井さんはこの言葉を重ねて何度か口にした。真っ直ぐに人をおもう人。一緒に働くスタッフの変化にもすぐに気がつく。

「今日顔色悪いね、どうしたん?」わざわざ踏み込んでは聞かない人もいる。それでも気づくなり相手に聞くのは「聞いてしまうんですよね、考えないでそうしちゃう。」という風に笠井さんは言う。でも、お話を聞いていたら、笠井さんの中に「何かあったら助け合う」この行動がベースにあるから、考えるよりも先に動いてしまうのではないか…そんな風に思えてくる。

そして、こんな時は人のために動いたらいい、その判断が“考える” よりも早くなるのは、いつも当たり前に人のことを思い、考えているから。


 笠井順子さんは、販売スタッフとして店頭に立つ。親しみやすく、お客様と会話が弾むこともしばしば。「私、三田が地元なので知り合いが多いんです。お客様の中にも、手を振ってお店の中に入って来られる方もいらっしゃいますし」

それは笠井さんが手を振りかえしてくれる人だってわかっているから、そう社長が添えると、「すみません、正面からやってしまう(手を振り返してしまう)んですよ」と、ちょっと困ったように笠井さんは笑った。


 そう、ただ知り合いというだけでお客様と近く立っているわけではない。店頭で初めてお会いしたお客様とも、だんだんと距離が縮まってくるのを感じられる。“この間してもらったからまた来たわ。あなたがいてよかった” “疲れてるやろ~飴ちゃん食べ”、自分がお客様ならして欲しい事 、されて 嬉しい事を想像しながら 、お客様の立場になってご希望を伺う。そこから自然と、温度のある会話が生まれていく。


 お客様にとって、と思うからこそ、笠井さんがはっきりと意識していることもある。例えば贈り物の熨斗や包装、お客様が気づかず本来の意味からずれたご希望をされる事がある。「届いた先で失礼となり、お客さまの顔に泥が塗られるとわかる場合、その時は申し訳ないのですが、お客様もやっぱりこっちの方が良かったねって言ってくれるように、伝えさせていただいています」

ただ物を売るのではない。サントアンを選んでくださったことに応えられるように。贈り物にこめられたお客様の気持ちが、届くように。

「だから私、包装のシールが歪んでるのとかもすごく気になるんですよ。そこにお店の表情が出ている気がして」お客様に届く包装はお店の顔。その気持ちから、手元の仕事も丁寧になる。


 笠井さんがサントアンで働き始めたのは子育ての忙しい時期が過ぎ「そろそろもう一回働こうかな」と思った頃。独身の時以来、久しぶりの仕事。初めはちょっと勇気もいった。言われたことをするだけで精一杯。そんな態度を「自分で出来ないって決めてる」こんな言葉で背中を押されたこともあった。

 お店のこと、目の前の仕事が次第に自分ごとへ変わっていったのには、一緒に働く仲間の存在(笠井さんは “同士”と言われた)も大きかった。「同じ世代の販売スタッフが、4人いるんですよね。それぞれの役割を活かせて、お互いを邪魔せず、同じ方向を見て働いている環境が刺激になって、どんどんどんどんと入ってしまった」

お店の風土の上、みんなが生き生きとできることをして、得意不得意もカバーし合い、前を見ている。「ひとりではなかなかしんどいので、その人ができないんだったらみんなでカバーしようよって協力しあってる。そこに楽しさもある。しんどいこともね、みんなでしたら楽しめるかなって」


 暮らしていると、それぞれに様々な事情も生まれる。家族のサポートでシフトに入れない時や、体調のこと、その時その時、互いにカバーする環境に自然となっているそう。「あたたかい」思わず口からこぼれると、笠井さんも強く頷いた。互いに気遣いフォローし合える環境はお店の雰囲気となって、きっとお客様にも伝わっていると思う、と。


 そして笠井さんが繋がりを感じているのは、販売スタッフの間だけではない。「うちのお店」「私たち」笠井さんがお店について語る時の主語はずっと、こうだった。「製造さんが美味しいケーキを作る。ギフトさんは素敵なギフトを作る。焼き菓子もそう。それをもっと素敵にするのが販売員かな、とも思います。全部が繋がっていて、全部が揃わないと、サントアンじゃない。全部が揃ってサントアン。」


 今、15 年勤めてきたお店での仕事は、“生活の一部” と笠井さんは言う。「なんかね、嫌な事があってもここに来たらちょっと忘れられるんですよね。する事がいくらでもあって、集中して、同士と話して笑いながら」

互いに助け合って、笑い合って、目の前の人ために一生懸命尽くしていたら、心に引っかかっていたことも、気づくと小さくなっている。そして、「最後は “ありがとう、やっぱ

りよかったわ” って帰っていただくことが、私たち一番嬉しい」


お客様が喜んでくださることが、自分達の喜びになる。人を思うことで笑顔の場を生む人。思いを同じくする仲間と、今日も共に。


(サントアン販売員)